2022-01-01から1年間の記事一覧

江島詣 弁財天信仰のかたち

江島詣 弁財天信仰のかたち (有隣新書84)作者:鈴木 良明有隣堂Amazon 江島は、風光明媚な景観や新鮮な魚介等で知られる日本屈指の観光地である。訪れる人々の多くにとって、緑の江島と相模湾越しの富士の佳景は格別なものがある。江戸時代まで江島は神仏習合…

ながい坂

ながい坂(上)(新潮文庫)作者:山本周五郎新潮社Amazon 徒士組という下級武士の子に生まれた小三郎は、八歳の時に偶然経験した屈辱的な事件に深く憤り、人間として目ざめる。学問と武芸にはげむことでその屈辱をはねかえそうとした小三郎は、成長して名を…

虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者:伊藤 計劃早川書房Amazon 9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、…

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て作者:逢坂 冬馬早川書房Amazon 独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前…

南鳥島特別航路

南鳥島特別航路 (新潮文庫)作者:夏樹, 池澤新潮社Amazon 日本最東端絶海の孤島・南鳥島、漆黒の大鐘乳洞、容赦ない豪雪、美しく広がる大珊瑚礁、崩れる山、荒れ狂う川、生き物たちを優しく包み込むブナ林、マングローブ―。人類誕生の遥か昔より恒久に続く、…

1Q84

1Q84(BOOK1~3)合本版(新潮文庫)作者:村上春樹新潮社Amazon 1Q84年──私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私…

兵器と戦術の日本史

兵器と戦術の日本史 (中公文庫)作者:金子 常規中央公論新社Amazon 古代から現代までの戦争を、殺傷力・移動力・防護力の三要素に分類して捉えた兵器の戦闘力と運用する戦術の観点から豊富な図解で分析。 古代の倭の朝鮮半島での戦いから始まり、東北戦争、源…

東京の古本屋

東京の古本屋作者:橋本倫史本の雑誌社Amazon 古本を売る。それと生業とする。古本屋の店主と過ごした3日間。 開発、オリンピック、感染症──揺れ動く東京で、商いを続ける10軒に3日ずつ密着取材を敢行した。古本屋に流れる時間から、東京の姿が立ち上がる。 …

サラ金の歴史 消費者金融と日本社会

サラ金の歴史 消費者金融と日本社会 (中公新書)作者:小島庸平中央公論新社Amazon 個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融は、多くのテレビCMや屋外看板で広く知られる。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融などを経て変化した業界は、経済成長…

激動 日本左翼史 学生運動と過激派1960-1972

激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書)作者:池上 彰,佐藤 優講談社Amazon 高揚する学生運動、泥沼化する内ゲバ、あさま山荘事件の衝撃。左翼の掲げた理想はなぜ「過激化」するのか? 戦後左派の「失敗の本質」。 「この時代は、左翼…

土地は誰のものか 人口減少社会の所有と利用

土地は誰のものか: 人口減少時代の所有と利用 (岩波新書 新赤版 1914)作者:五十嵐 敬喜岩波書店Amazon 「太平洋戦争の敗北より深刻」と司馬遼太郎が嘆いた地価高騰・バブルから一転、空き家・空き地の増大へ。生存と生活の基盤である土地はどうなるのか。近…

灼熱

灼熱作者:葉真中 顕新潮社Amazon 沖縄生まれの勇と、ブラジルで生まれ育った日本移民二世のトキオ。一九三四年、日本から最も遠い地・ブラジルの日本人入植地「弥栄村」で出会った二人は、かけがえのない友となるが……。 第二次世界大戦後、異郷の地で日本移…

パリ燃ゆ

新装版 パリ燃ゆ I作者:大佛 次郎朝日新聞社Amazon 「鞍馬天狗」ドラマ化などで、改めて出版界の脚光を浴びつつある作家・大佛次郎。ライフワーク『天皇の世紀』と並ぶ不朽の名作を新装復刻する。19世紀のヨーロッパを震撼させた大事件パリ・コミューンをテ…

シルバービュー荘にて

シルバービュー荘にて作者:ジョン・ル・カレ早川書房Amazon 英国の小さな海辺の町で書店を営むジュリアンは、町はずれのシルバービュー荘に住むエドワードと親しくなるが、ある日、エドワードから見知らぬ女に手紙を渡すよう頼まれる。一方、英国諜報部長は…

硫黄島 国家に翻弄された130年

硫黄島 国策に翻弄された130年 (中公新書)作者:石原俊中央公論新社Amazon 小笠原群島の南方に位置する硫黄島。日本帝国が膨張するなか、無人島だったこの地も一九世紀末に領有され、入植・開発が進み、三〇年ほどで千人規模の人口を有するようになった。だが…

神々の乱心

神々の乱心 上 (文春文庫)作者:松本 清張文藝春秋Amazon 宮中に何事か画策する謎の新興宗教。昭和8年。東京近郊。梅広町の「月辰会研究所」から出てきたところを尋問された若い女官が自殺した。自責の念と不審から「月辰会研究所」をマークする特高課第一係…

太平洋戦争 日本語諜報戦 言語官の活躍と試練

太平洋戦争 日本語諜報戦 ──言語官の活躍と試練 (ちくま新書)作者:武田珂代子筑摩書房Amazon 太平洋戦争の対日諜報戦で、捕獲した日本軍文書の翻訳、暗号解読、捕虜の尋問、プロパガンダ活動等に携わった言語官たち。終戦後は連合国軍の一員として戦犯裁判や…

神奈川の記憶

神奈川の記憶 (有隣新書83)作者:渡辺 延志有隣堂Amazon 朝日新聞神奈川版連載「神奈川の記憶」から42話を選び、テーマごとに編集、連載時に書けなかった新たな情報や考察などを加筆して収録。 身近な歴史をテーマにして、人に会い、街を歩き、本や資料を探…

美貌の女帝

美貌の女帝作者:永井路子文藝春秋Amazon相模のもののふたちを読んで、永井路子作品に関心を持ったので、近くの図書館にあったものを読んだ。奈良時代の元正天皇が主人公で、母の元明天皇を含め、彼女たちを蘇我の女たちと定義して、藤原家との争いを題材にし…

中世社会の始まり <シリーズ日本中世史1>

中世社会のはじまり〈シリーズ日本中世史 1〉 (岩波新書)作者:五味 文彦岩波書店Amazon刊行された当時に読んだが、大河ドラマをきっかけに改めて読み返した。当時よりは面白く感じたが、やはり、通史的な要素がほとんどないので読みづらい。いつの間にか平家…

相模のもののふたち

相模のもののふたち―中世史を歩く (有隣新書10)作者:永井 路子有隣堂Amazon頼朝挙兵のときにそれに従い、または戦った相模の武士たちについて、その城跡を訪ねながら追っている。小説家が書く紀行のような感じでとても読みやすく、対象が身近に感じられる。…

地方メディアの逆襲

地方メディアの逆襲 (ちくま新書)作者:松本創筑摩書房Amazon著者は「軌道」を書いたジャーナリストだった。最初に取り上げられている秋田魁のイージス報道は、自分も秋田にいて間近に感じていたが、あの記者さんが一度朝日にいって戻ってきた人だとは知らな…

パヴァーヌ

パヴァーヌ (ちくま文庫)作者:キース ロバーツ筑摩書房Amazonローマ法王が支配したままの20世紀が舞台。蒸気機関が発達して他の技術の発展を教会が押さえつけたため、中世のまま20世紀になっているという想定で、短編が6つ収められている。途中正直読みづら…

メキシコ革命物語 英雄パンチョ・ビリャの生涯

メキシコ革命物語―英雄パンチョ・ビリャの生涯 (朝日選書 (285))作者:渡辺 建夫朝日新聞社Amazon昔古本で買ってそのままなんとなく読まないでいたが、ふと思い立って読んだ。1910年からのメキシコ革命が題材で、農民やインディオを中心にしたメキシコ革命の…

誕生日パーティー

誕生日パーティー (集英社文芸単行本)作者:ユーディト・W・タシュラー集英社Amazon本の雑誌のミステリー第一位にされていた。ポルポト政権下のカンボジアからオーストリアに逃れたキムの50歳の誕生日に、同じくオーストリアに難民としてきた女性が招かれ、…

現代ロシアの軍事戦略

現代ロシアの軍事戦略 (ちくま新書)作者:小泉 悠筑摩書房Amazonごく最近書かれた新書。ウクライナ情勢が緊迫している中で、2014年のウクライナ紛争や、クリミア半島のロシア併合についてあまり知らないと思ったので読んだ。ロシアのハイブリッド戦争について…

サハリン島

サハリン島作者:エドゥアルド・ヴェルキン河出書房新社AmazonSF作品で、核戦争後に日本が再武装し、サハリンを統治しているという世界。ロシア人は死滅しており、中国人朝鮮人がひたすら蔑視されている。サハリンでは死体を燃やして発電しているとか、石鹸工…

頁をめくる音で息をする

頁をめくる音で息をする作者:藤井基二本の雑誌社Amazon尾道で古本屋を営む著者のエッセイ。読んでいて身がつまされる思いになる。古本屋を自分もやりたいと思った。

レッド・メタル作戦発動

レッド・メタル作戦発動 上 (ハヤカワ文庫NV)作者:マーク グリーニー,H リプリー ローリングス四世早川書房Amazonロシアが陽動作戦としてヨーロッパに侵攻し、そのすきをついてケニアの鉱山利権を奪おうとするのを、アメリカ海兵隊が阻止するという話。アメ…

神の火

神の火(上) (新潮文庫)作者:薫, 高村新潮社Amazon高村薫の30年近く前の小説。10年前、福島原発事故の後に一度読んだが再読。なぜ原発に侵入しようとするのか、そこがいまいち感情移入できない。