秋田美人の謎 (中公文庫 に 17-1)

白い肌の秘密とは?小野小町は実在したのか?東北の古代の歴史を繙き、伝説が生まれた様々な背景や素因を探る。作家、矢田津世子、大正のノラ山田順子、夢二のモデルともなったお葉など日本史を彩った秋田女性の魅力を語る。巻末に秋田美人を計測で実証した杉本元祐博士の論文「秋田美人を科学する」を所収。図版多数。

古代の北方の大陸との交易で、日本海側には大陸の血が多く入っていたのではないかと著者が空想を膨らませる。

ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで

冷戦終了後、ユーラシア世界はいったん安定したというイメージは誤りだ。ソ連末期以来の社会変動が続いてきた結果としていまのウクライナ情勢がある。世界的に有名なウクライナ研究者が、命がけの現地調査と100人を超える政治家・活動家へのインタビューに基づき、ウクライナ、クリミア、ドンバスの現代史を深層分析。ユーロマイダン革命、ロシアのクリミア併合、ドンバスの分離政権と戦争、ロシアの対ウクライナ開戦準備など、その知られざる実態を内側から徹底解明する。

ロシアのウクライナ侵攻は、平和な国に突如乱暴なロシアが攻め込んだというイメージが強いが、ソ連崩壊後にウクライナが出来て以来の歴史があることがよくわかった。2014年にクリミアがロシアに併合された後、ウクライナが制裁措置として北クリミア運河の水を止め、クリミアの農業が壊滅状態になっていたとか、ドンバス戦争で14000人以上がなくなっており、そのほとんどは2014年だとか、ウクライナ側がドンバスの民間都市を長距離砲撃していたとか。ウクライナを善意の被害者とみる見方からはこの本は読んでいてつらいかもしれない。

ハマのドン 横浜カジノ阻止をめぐる闘いの記録 (集英社新書)

政権中枢が推し進める横浜市へのカジノ誘致に対し、これを阻止すべく人生最後の闘いに打って出た91歳“ハマのドン”こと藤木幸夫。
そこには横浜のみならず全国の港湾を束ねる者として、「博打は許さない」という信念があった。
カジノの是非について住民投票を求める市民の署名は二〇万筆近くに上ったものの、市議会では否決。
決戦の舞台は2021年夏、横浜市長選となった。菅首相はじめ政権総がかりで来る中、藤木と市民との共闘のゆくえは――。
国内外で高い評価を得たドキュメンタリー制作の舞台裏を明かす。

横浜市の藤木氏がカジノ反対に転じ、横浜市長選で山中氏を擁立して勝つまで書いている。著者は純粋に藤木氏に入れ込んでいるが、実際は、反菅政権の人たちから藤木氏も体よく利用されているだけなのでは?という気もする。

ドキュメント隠された公害: イタイイタイ病を追って (ちくま文庫 か 1-5)

富山県イタイイタイ病と同じ病気が東邦亜鉛鉱業所のある対馬でも発生していると知って、1969年8月、著書は対馬に渡った。しかし、対馬樫根部落の住民は一致団結して病気の存在を否定し、マスコミの取材を拒否しつづけた。いったい対馬に公害はあるのかないのか、もしあるとすればなぜ隠そうとするのか。一企業が住民に行ったおそるべき支配構造の実態を把えた迫真のドキュメント。

学生時代に読んでかなり強く感銘を受けた。その後の就活で通信社を受けたとき、エントリーシートにこの本や鎌田慧を挙げた記憶がある。今読むと、まだ30歳そこそこの著者が対馬で現地に受け入れられずにもがいている様子が痛々しく感じてしまうが、そのように体当たりで取材し続けていたからこそ、内部告発の書面が著者に送られてきたのだろう。

戒厳

ソウルの大学への就職話というのもそれほど悪いものではないかもしれない。なにしろ自分はこの2年というもの、横文字ばかり読んできて、すっかり頭が欧米向きになってしまった。フランス語も英語も存在しない、この不思議な文字の連なりからなる国に足を向けるというのも、考えようによっては面白いに違いない。焼肉もキムチも好きだ。焼肉は食べ放題だっていうではないか。きっとこれは真の意味で冒険となるだろう。何しろまったく予備知識のない社会に、白紙同然の状態で行こうとするのだからな。となれば、ぐずぐずはしていられない。今すぐパスポートを申請し、ヴィザの発給を受け、この文字に少しでも親しんでおくことだ。わたしはそう決意した。わたしはパスポートを受け取ると、その足で南麻布にある大韓民国大使館に向かった。
 1970年代に日本人が韓国を訪問するには、理由と期間の如何を問わず、ヴィザの発給を受ける必要があった。とりわけわたしの場合には、観光や就学のヴィザではない。一年間を外国人教師として過ごすには労働ヴィザを取得しておかねばならない。それは極めて稀なことだったのである。……
「ところで皆さん、韓国に行ったことはありますか。」宴会のなかで梁さんの発したひと言が「わたし」の運命を大きく変えた。20代前半の「わたし」は日本語教師として、ソウルの大学に赴任し、そこで朴正煕大統領暗殺、戒厳令の施行に遭遇する。『ソウルの風景』(岩波新書)の著者による渾身作。

著者を思わせる若者が、韓国の日本語教師として1979年に1年間赴任する様子を書いている。韓国語を少しずつ身につけ、現地に溶け込んでいく。日本人観光客に韓国語で抗議するくだりが良かった。タイトルの戒厳は、朴正煕暗殺の後の戒厳令を指している。

三体3 死神永生

世界的ベストセラー三部作、完結篇! 〈ローカス賞受賞〉三体世界の太陽系侵略に対抗すべく、侵略艦隊の懐に人類のスパイをひとり送る――奇想天外なこの「階梯計画」を実現に導いたのは、若き航空宇宙エンジニアの【程心/チェン・シン】。計画の鍵を握るのは孤独な男・【雲天明/ユン・ティエンミン】。この二人の関係が宇宙全体の運命を動かすとはまだ誰も知らなかった……。

三部作の最終作。二作目の最後で三体世界と停戦状態になったが、突然三体世界が襲ってきて全人類がオーストラリアへ移住させられるなど、突拍子もない展開だが面白い。最後はもうよくわからなくなった。

蝦夷太平記 十三の海鳴り (集英社文庫)

時代の荒波を越えていけ!
ときは鎌倉末期。蝦夷管領・安藤又太郎季長の三男・新九郎が、幕府と朝廷に翻弄されながらもアイヌと共生し、逞しく活躍する感動の歴史巨編。
ときは鎌倉末期。蝦夷管領、安藤又太郎季長の三男・新九郎は父から出羽の叛乱鎮圧を命じられる。ことの首謀者で幕府方を標榜する叔父の安藤五郎季久に対し、天皇方と手を組み討幕を目論む季長。一族や領地の垣根を越えて、北朝南朝に分かれて争う時代の波は東北にも広がり、大規模な戦の影が迫る──。アイヌと関係を築きながら新九郎は人びとを守れるのか。安部版「太平記」第3弾。

荒唐無稽な展開が多い、典型的な時代小説だった。