断作戦

戦争文学の「幻の名作」として本篇ほど長く文庫化が待望された作品はない。中国雲南の玉砕戦から奇跡の生還をし、郷里で老いてゆく二人の兵士。戦争とは何か。そして国家とは?答えられぬ問いを反復し、日々風化する記憶を紡ぎ、生と死のかたちを静謐に語る。この稀有な作家でなければ到達しえなかった清澄な文学世界である。

謄越城が玉砕した際に生き延びた兵士2人の戦後の交友を、当時の記憶を交えながら書いている。戦後35年を過ぎた1980年が舞台になっていて、2人とも定年を過ぎ、それぞれ戦記を綴っている。戦死した戦友の妹を訪ねに2人は東京に行くが、そこに至るまでも当時の玉砕に至る記憶が語られている。1980年当時ですでに、あと20年して戦争に行った世代が死んでしまったら、誰も戦争を記憶していないだろうと書かれていて、戦後80年近くたった今読むと重たい。