フーコン戦記

フーコンというビルマの地名を知る人が、今この日本にどれだけいるだろう。インパールと並ぶ、必敗の愚かな戦いだった。歳月を経て、最後の兵士が淡々と声低く語り尽くす、戦争の真実。『文学界』連載の単行本化。

三部作の最終作。戦後半世紀近くなっていて、主人公の傷痍軍人も70歳をこえており、孫に戦争の話をしたら自慢話と言われて語る気がなくなる。フーコンで夫を亡くした未亡人、同じ戦場から帰還した戦友との交遊も書かれている。これが書かれたころからさらに20年以上たっている今、このように従軍経験を語れる人はもうほとんどいなくなってしまっている。