真空地帯

真空地帯 (岩波文庫)

真空地帯 (岩波文庫)

  • 作者:野間 宏
  • 発売日: 2017/12/16
  • メディア: 文庫
数年ぶりに再読した。以前読んだ時は、陸軍刑務所帰りの木谷がその過去を三年兵にあかされ、四年兵の年次の力を嵩に、古年兵や補充兵を整列させて殴るところだけ印象に残っていた。これが発表された当時は誰もが軍隊経験を有していて、その共通認識のもとに読まれたのだろう。大学出で左翼運動をしていたと思しき曽田一等兵も今回は印象に残った。木谷が他の兵隊を殴る時、曽田は自分がこれまで木谷に優しく接していたために自分は殴られないと思っていたが、木谷は曽田も殴りつける。曽田は、自分もやはり木谷を刑務所帰りとして扱っていたことを悟るところが印象的だった。また、初年兵係の三年兵が学徒出身の初年兵をこれでもかというくらい痛めつけるが、悔しかったら早く将校になって殴り返せというところも印象に残った。神聖喜劇も久しぶりに読み返したい。