最近のもの

秋田藩」は、佐竹氏が茨城から秋田入りしてから明治までをまとめたもので、各藩のシリーズものの中の一つ。割と面白く読めた。
「下戸の夜」は、酒を飲まずに過ごせる、東京の夜のスポットや、その過ごし方をまとめている。なかなかこういう視点の本ってないと思うが、読んでいて楽しい。
「巨象の漂流」は、2010年のJAL破綻を扱っている。以前読んだ「銀翼のイカロス」がJAL破綻をモチーフにしていて興味を持った。当時、すでに社会人になっていて政権交代のドタバタの末端には触れていたが、同時並行でこういう事態が進んでいたとはまったく知らなかった。運輸省JALとの昔からの関係や、羽田空港国際化をめぐる背景は勉強になった。また、民主党政権下での政治家同士の力関係も興味深い。
天皇と戸籍」は、戸籍と皇統譜の違いや、皇室女性の結婚をめぐる事情、住民登録はされていないのに住民税は払っている、皇居に本籍を置いている人の推移など、大変興味深く読んだ。例えば皇族女性が一般男性と結婚して皇籍離脱し、その後離婚した場合、皇室に戻れるのかなど。皇室の制度については、まだ依然として男女の差が残っているようだ。
「奴隷船の世界史」は、アフリカ、新大陸、欧州の間の三角貿易をテーマにした新書。最近になり、当時の記録がデータベース化されてきて奴隷貿易の実態がつかめてきたのだとか。あまり凄惨さを感じさせない淡々とした記述だが実際にはとても残酷な話。また、実際に船を動かす水夫も、人さらい同然に連れてこられ、病気にかかれば新大陸に置き去りにされるなど、ひどい扱いだったようだ。イギリスで、奴隷貿易廃止の運動として砂糖の不買運動がされていたことを初めて知った。
「かんぽ崩壊」は、かんぽ商品の不適切販売を追ったもの。郵便局員を信頼する高齢者に対し、本人のためになるとは思えない商品を売り続けたり、二重契約させたりするのはおそろしい。問題が指摘された後の顧客調査も、はがきの返送がなければ問題なしと扱うなど、なるべく問題を小さくしたいという意図が見える。被害を受けた契約者はもちろんだが、局員の処遇も問題だと思う。郵便収入が減る中でユニバーサルサービスを維持し続けるために、どういう解決方法があるのか社会全体で考えないといけないが、なかなか解がみつからない。
「神器」は、10年ほど前の小説。昭和20年に単艦で出撃した巡洋艦橿原がどんな密命を帯びているのかというストーリーに、艦内の殺人事件や、乗船した陸軍関係者の怪しげな動きなどが絡み合っていく。艦内にはネズミが横行していて、水兵がネズミになってしまったりする。著者の作品は以前「石の来歴」を読んだが、本作も現実と幻想が少しずつあやふやになっていき、少し読みにくい。
しんがり」は、山一が破綻した後の事後処理を担った職員たちを追ったもの。山一が破綻した後、メリルリンチが山一社員の受け皿になったことをはじめて知った。社内政治の結果として破綻時の社長となった野澤社長は気の毒な気がする。最後まで踏みとどまって事後処理を担った人たちの責任感には頭が下がる。
空飛ぶタイヤ」、「不祥事」、「銀行総務特命」は、いずれも池井戸潤の小説で、特に「空飛ぶタイヤ」は実際の事故が題材にされている重いもの。不祥事は花咲舞シリーズ。