杉原千畝が産んだ現代金融市場の黙示録に、『ウルトラ・ダラー』のコンビが、秘やかな諜報のメスを入れ始めた…。
前作ウルトラ・ダラーと登場人物が連続しているのだが、ウルトラ・ダラーの話の筋をすっかり忘れていた。題材はとても面白いが、小説としては正直凡作。著者はノンフィクションを書いてこそ一級。誰も小説を求めていないだろう。
こういう、実話を主題として書くフィクションは功罪相半ばだと思う。前作では田中均を題材にした人物が北朝鮮のスパイ役になっていたが、単純な人間があれだけ読むと、本当に北朝鮮のスパイなんじゃないかと誤解するだろう。