あの本は読まれているか

冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われる。だが実際はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けて、ある特殊作戦に抜擢された。その作戦の目的とは、反体制的だと見なされ、共産圏で禁書となっているボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で迫害をおこなっているソ連の現状を知らしめることだった。そう、文学の力で人々の意識を、そして世界を変えるのだ。一冊の小説を武器とし、危険な極秘任務に挑む女性たちを描く傑作長編!
解説=大矢博子

CIAの女スパイとボリス・パステルナークの愛人の視点が交互に描かれて、CIA側は、さらに複数人に視点が分かれている。愛人は一度強制収容所に送られ、スターリン死去で釈放されるが、パステルナーク死後にまた逮捕されるのが、当時のソ連の恐ろしさを感じる。CIA側は女性同士の同性愛も題材になっている。