オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略 (朝日新書)

日本の北方に、ロシアの「核要塞」が広がっている――。
人知れず極東で進められているロシアの核戦略を、超人気軍事研究家がロシア軍内部資料と衛星画像インテリジェンスから明らかにする。
さらにウクライナ戦争と極東ロシア軍との関わり、日本のあるべき対ロ安全保障政策についても解説。

冷戦時代のオホーツク海への原子力潜水艦の配置を追いながら、これからの対ロ政策についても触れている。70、80年代にオホーツク海への潜水艦配置が最盛期をむかえたが、ソ連崩壊で壊滅的になり、それがまたプーチン政権下で再構築されているらしい。とはいえ、ウクライナ戦争のために陸上戦力が割かれるなど、戦力全体としては低下しているようだ。今のロシアは、核の力に頼って、昔の超大国だったころの体制を維持しようとしているのだとか。

ドキュメント 屠場

屠場-.そこは鍛え上げられた職人芸が,商品としての食肉の味と価値を左右する世界だ.日本人の肉食の歴史とともに歩んできた労働現場の実像と,いわれなき職業差別と身分差別にさらされながら,合理化の波に抗して伝統の技と熟練を守りつづける誇り高き労働者たちの気概を,反骨のルポライターが描く.

もう四半世紀前の名作。これを読むと、芝浦屠場~がこれを種本にしていることが分かるが、まったく触れていないのが不可解。

権力の館を歩く

歴代首相邸や政府・政党の建築物を訪ね、その空間と時間から権力者達の本性に迫る。
建築と政治の関係性という全く新たな視座を打ち立てるノンフィクション。

題材は面白いのだが、御厨の文章がこんなに読みづらいとは思っていなかった。新聞に掲載していたはずなのに。

日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る (河出文庫)

墜落現場の特定と救助はなぜ遅れたのか。目撃された戦闘機の追尾と赤い物体。仲間を失った元客室乗務員が執念で解き明かす渾身のノンフィクション。事故ではなく事件なのか?

公表されている以前の墜落前に、ファントムが2機日航機を追尾していたとか。解説で森永卓郎が書いているのとは逆に、主観的な記述が多いように感じた。

芝浦屠場千夜一夜

芝浦屠場に魅せられみずから現場で働き続けた女性ライター。
彼女が見た食肉解体現場の驚きの日常とそこで働く人々のそれぞれの物語。

ある場所に行かなければ見えないものがあります。ここでは見えないものが、どこか違う場所では見えるかもしれない。
見たい、見たい。世の中の動いている場所に行って、一番前で見たいのです。野次馬なのです。
それは「のぞき見である」「悪趣味だ」と非難されることなのでしょうか。
私は何かがわかりたかったのです。
われわれとは何者なのか。私は何者なのか。
この社会はどうやって存在しているのか———(本文より)

1991年から98年まで実際に芝浦で働いたライターが四半世紀後に書いたもの。実際に従事した実体験をもとに書いているのでリアルだし臨場感もある。また、解放同盟が行っている糾弾会、確認会の様子を文字に起こしているのも貴重だと思う。ただ、その様子を客観的に読めばただのつるし上げ、いちゃもん付けで、それを無批判に受け入れていることに違和感を感じてしまう。

三体 (ハヤカワ文庫SF)

尊敬する物理学者の父・哲泰を文化大革命で亡くし、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔。彼女が宇宙に向けて秘密裏に発信した電波は惑星〈三体〉の異星人に届き、驚くべき結果をもたらす。現代中国最大のヒット小説にして《三体》三部作の第一作

満を持して文庫化されたとのことなので初めて読んでみた。結構強引な気もするがどんどん読ませる筆力がすごい。4月、6月にも続編が文庫化されるそうなので楽しみ。

在日米軍基地 米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史 (中公新書)

世界で最も多くの米兵が駐留し、米軍施設を抱える日本。米軍のみならず、終戦後一貫して外国軍の「国連軍」も駐留する。なぜ、いつから基地大国になったのか。米軍の裏の顔である国連軍とは。本書は日米の史料をふまえ、占領期から朝鮮戦争、安保改定、沖縄返還、冷戦後、現代の普天間移設問題まで、基地と日米関係の軌跡を追う。「日本は基地を提供し、米国は防衛する」という通説を覆し、特異な実態を解明。戦後史を描き直す。

ここ数か月読んだ新書の中でナンバーワン。
在日米軍基地のうち主要な基地は、同時に国連軍基地にもなっている。朝鮮戦争の残滓としてしか意識していなかったが、それが実は重要だということがよくわかった。国連軍地位協定で、国内に国連軍がいなくなったときに協定が破棄されることになっているため、70年代にアメリカ、英連邦などが苦労して誰かしら米軍以外の軍人が日本に駐留しているようにしていたとか、その綱渡りの状態をつないでいたのがタイ軍だとか、知らないことばかり。そして、鳩山首相時代に最低でも県外発言があったが、国連軍地位協定に基づく国連軍基地を移転させる以上、国外という選択肢はありえず、それを知らなかった首相と知らせなかった官僚機構というのも示唆に富んでいる。