つわものの賦

2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代、鎌倉武士たちのリアルな姿を描き出した面白さ抜群の傑作歴史評伝。
「ここで私は、大小いくつかの作品で扱ってきた鎌倉時代に対する一つの決算書を書いた。」(あとがきより)
『炎環』『北条政子』で鎌倉幕府成立の時代を小説として描いた後も、『吾妻鏡』を何度も読み返し、この時代を【大きな変革の時代】として位置付けてきた永井路子氏。その盛り上がりの中核にあるのは、外からの力でも、源頼朝個人の挙兵ではなく、東国武士団の行動として捉えた時、歴史的な意義が明確に見えてくる。本書は、永井氏が鎌倉時代を扱った一連の小説の原点であり、帰結でもある。

源平の争いから承久の乱までを、東国と西国の戦いとして捉えている。東国は西国のいわば植民地だったと著者はいう。頼朝の奥州攻めは、中世対古代の争いだとも。これまでの小説で描かれた永井史観がより細かく書かれている。