二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動

二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)
高橋 正衛

中央公論社 1994-02
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昭和十一年二月二十六日、降りしきる雪を蹴って決行された青年将校たちのクーデターの結果は全員処刑により終った。本書は、多くの資料によって事件の経過を再現し、彼らが意図した「昭和維新」「尊王攘夷」の意味を探り、軍隊のもつ統帥権意識を解釈の軸として、昭和初期からの農村の疲弊に喘ぐ社会との反応、軍部の政治への結合と進出の過程を追う。なお、改版に当り「命令・服従」という日本軍隊の特性について増補・加筆する。

昭和40年に書かれたものでもはや古典。事件の流れも簡潔に整理されているし、そこに至るまでの過程も、軍人が天皇に抱く心理をキーとしてわかりやすく説明されている。青年将校たちの心情への共感、その裏返しの真崎大将への軽蔑という構図は本書から産まれたのではないかとも思う。

軍隊では、天皇の命令だと思い、思わせなければ、死地に赴かせることはできないというのは、軍隊体験者の著者だからこその視点だと思う。ただそうなると、他国の軍隊はどうやって整理をつけているのだろう。