政治勢力としての陸軍 - 予算編成と二・二六事件

政治勢力としての陸軍 - 予算編成と二・二六事件 (中公叢書)政治勢力としての陸軍 - 予算編成と二・二六事件 (中公叢書)
大前 信也

中央公論新社 2015-02-24
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満洲事変以降、国防の充実を最優先する陸軍は、要求する政策を実現するためにどのような政治行動をとったか。本書は関係者の日記など膨大な資料を利用して、昭和一一年度予算編成の過程を詳細に検証する。とりわけ、陸軍省首脳のリーダーシップの欠如に起因する中堅幕僚の擡頭、部内上下の亀裂と統制の乱れに注目し、予算編成をめぐる紛糾、二・二六事件の善後処置の立案、さらに広田弘毅内閣組閣の際の介入などが、中堅層の主導で進められたことを明らかにする。政治勢力としての昭和期陸軍の実態に光を当てる力作論考。

昭和11年度予算編成の過程が追われている。官僚組織としての陸軍省を題材にしており、新鮮でとても面白い。当時の陸軍省では、経理局とはまた別に軍務局軍事課があり(今の各省でいう官房政策課的なものか?)、そこの予算班が予算編成を一手に担っていたとか。当時の高嶋予算班長の日記をもとに丁寧に書かれていて、混乱した様子が伝わってくる。

兵科将校は部隊と陸軍省参謀本部等を行き来していくが、軍人しかいない部隊と異なり、陸軍省では大蔵省をはじめとして他省庁との折衝、部内の調整をおこなわなければならない。徐々に陸軍省にそのようなノウハウが蓄積されていくことで、二・二六事件以降は、陸軍が軍事面ならず国家財政、内政にも介入していったようだ。