悲しみの島サハリン―戦後責任の背景

悲しみの島サハリン―戦後責任の背景悲しみの島サハリン―戦後責任の背景
角田 房子

新潮社 1997-03
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戦後の樺太=サハリン。日本人だけを乗せて出港する引揚船を見送りながら、朝鮮半島出身者たちは一日も早い帰郷を夢見た。なぜ、半世紀を経た今日まで、彼らはサハリン島に閉じ込められたままなのか。「もう命の時間はない、せめて故国の地に眠りたい」という悲痛な叫びを聞きながら、冷静に事実を追い、国と国との軋轢と、無関心の狭間に取り残された人々の五十年の軌跡をたどる。

この本はお薦め。品切れになってしまっているのがもったいない。

戦前に樺太に渡り、戦後日本人が引き上げた後も同地に残留せざるを得なかった朝鮮人の人々をめぐるルポ。ソ連社会保障政策のために生活は困窮を極めるとまでは言えないものの、望郷の念に駆られ、なんとか韓国に戻りたいと考えている。

特に、戦前、朝鮮に妻子を残したまま単身で樺太に渡り、或いは徴用されて渡らざるを得なかった人の話は考えさせられる。サハリンで独身を通した人、家庭を持った人、それぞれ、韓国へ数十年ぶりに戻って当時の妻子と再度共に暮らし始めるのだが、お互いの生活がそれまであまりに違っていたために、想像と異なりすれ違いの毎日が続いている様子が描かれている。サハリンでは、年金で不自由なく暮らすことが出来るが、韓国ではそれも支給されず生活も厳しい。故郷に戻ることが幸せなのか、サハリンに骨を埋めることが幸せなのか、自分がその立場になったらどちらを選ぶだろうか。

「慰安婦」問題とは何だったのか大沼保昭氏はこのサハリン棄民問題に長年携わっており、サハリン棄民という中公新書も出しているが絶版。重ね重ねもったいない。