統帥乱れて 北部仏印進駐事件の回想 (中公文庫)

仏印進駐をめぐる混乱は、前段階の陸軍のドイツ迎合やそれに同調する海軍部員の横紙破りへの対立として顕在化していた。本書中盤以降では、フランスとの平和的進駐の合意を現地陸軍が無視して無理矢理に戦闘行為に入ろうとするのを、海軍が陸軍上陸部隊船団から護衛艦を撤退させるという非常手段まで執って阻止する顛末が描かれる。その後も確執は激化し、ついに遣支艦隊に「協力不可能、離脱セヨ」との命令が下されるが……。
一参謀の視点に徹して仏印進駐の〝失敗の本質〟が浮かび上がる迫真の記録。半藤一利による著者インタビューを付す。

北部仏印進駐の際、何としても武力介入したい陸軍現地部隊、それを何とか止めようとして海軍が護衛艦を撤退させていたことは知らなかった。上陸部隊が控えている現地、陸海それぞれの司令部、軍令部、参謀本部との間で電報が行き交っているのがよくわかる。限られた通信環境でその時々の情報をもとに判断せざるを得なかった当時の様子は今では想像できない。著者は、武力行使したがるのは論功行賞を軍人が意識するからだと書いていてなるほどなと思わされた。解説を大木毅さんが書いている。