北帰行

暗闇から抜け出ようとするその列車のように、私もまた暗い二十歳から抜け出ようとしていた。北海道の炭鉱町から東京に集団就職した私。だが工場の同僚との諍いで、職を失ってしまう。やがて私は石川啄木の足跡をたどり、ふるさとへ向かう―1976年度文藝賞受賞の文学史に輝く伝説的名作。

外岡がなくなったので文庫化されたのかなと思う。大学生時代に何をきっかけか忘れたが、学生時代に文芸賞を受賞しながら朝日の記者になった著者のことを知り、興味を持って筑波の大学図書館で当時の古い本を借りて読んだ記憶がある。話の筋はほとんど忘れてしまっていたが、今読むといかにもな青春小説。なんというかほろ苦い気持ちになる。