総理

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山口 敬之

幻冬舎 2016-06-09
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そのとき安倍は、麻生は、菅は―。綿密な取材で生々しく再現されるそれぞれの決断。迫真のリアリティで描く、政権中枢の人間ドラマ。

著者は元TBSの政治記者で、安倍総理とは番記者として十数年つきあっている。第一次内閣の突然の退陣、その後の復活劇、消費税増税延期の際の麻生財務大臣とのやりとりなど、どれもその場に実際にいた人間しか書けないようなことを書いていて迫力がある。

とはいえ、こういう本を参院選前に幻冬舎から出す時点で、内容はおおむね予想がつくし、著者のお里が知れる。著者は政治家に密着しすぎという批判はあたらないと自分で書いているが、無意識に自分で自覚しているからこそ批判避けにそう書いておくのだろう。取材対象にあまりに近すぎて、自分がプレイヤーの一人になってしまっていることに気づいていないのか、気づいていながら無批判なのか、それをむしろ誇らしく思っているのかわからないが、違和感ばかりが残る。プレイヤーの一人といえば聞こえはいいが、体のいいメッセンジャーボーイの役割を嬉々として演じている。その結果、友好的な関係を気づいている(と本人では思っている)安倍、麻生の批判はまったくなく、逆に、石破さんなど対立勢力のことにはほとんど触れていない。自分は政権中枢に近いんだからそれも当然だろうと思っているんだろう。こういう本が無批判に受け入れられてしまうのが怖い。