福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞

福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞 (岩波新書)福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞 (岩波新書)
日野 行介

岩波書店 2014-09-20
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官僚の暴言ツイッター、健康不安、「金目」発言……。置き去りにされたままの福島の現状。子どもや自主避難者を守るべく作られた法律はなぜ、どのように骨抜きにされたのか。現地からの声、隠された多くの真相や証言から政府の思惑を明らかにし、被災者支援のあり方を考える。

前著では福島県民健康調査について触れていたが、本書では子ども被災者支援法を軸に論を進めている。はじめが復興庁暴言ツイッター問題で、当事者に直撃取材したのが著者だったようだ。

そのツイッター問題をはじめ、チェルノブイリ視察の報告書がなかなか表に出されなかったこと、個人線量計のテストデータもなかなか出なかったことなど、著者が取材で掘り出さなかったら世間に知られなかっただろうことはとても多いと思う。そういう意味で、事実を発見し取材していく過程はとてもスリリングだし興味深い。

ただ、そうやって掘り出した事実は、全て「国=悪」という先入観で色づけされ論を進めていくので、論理展開が甘いなあと読みながら思ってしまう。役人への取材の様子も、先方が急に早口になっただとか傲慢だったとか、予断を許す書きぶりがとても多い。役人が取材者に「『ウェッジ』読んだ?」と言うことが、なぜ政権中枢への近さを誇示することと受け取れられるのだろうか(p147)。著者の力量もさることながら、岩波の校正ももっとちゃんと読んで指摘すべきだと思う。