翔ぶが如く

翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎

文藝春秋 2002-02
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司馬遼太郎の小説は、中学生の時に「燃えよ剣」を買って読んでワクワクし、「坂の上の雲」や「菜の花の沖」を続けて読んだ。その後しばらくあいて「峠」を5年前くらいに読んで以来、小説は読んでいなかった。どうも、司馬遼太郎は10代が読むイメージが強く、いい大人が読んでいるのは恥ずかしいような偏見があったが、かといって読んでいないのも癪に障るので、文庫で全10冊とおそらく司馬作品で一番長いだろう本作を手に取った。

内容は周知の通り、西郷と大久保を中心に、征韓論論争から西南戦争までを描いている。主人公がいるようでいないのが他の作品と違うところで、西郷隆盛が主人公かというとそうは思えない。一番印象に残ったのは、一般的な本書の感想とは違うと思うが、村田新八。洋行帰りで大久保側についても良さそうだが、鹿児島に帰ればもう戻れないと分かりつつ、西郷に尽くすために鹿児島に帰るところはとても印象的。

司馬遼太郎の功罪は、その小説を読んでその時代が分かったつもりになってしまうことだろう。あくまでも小説なので、渡辺京二のように西郷の南島体験や藩政改革を見過ごしているなどと目くじらたてず、単純に読み物として楽しめばいいのだと思う。