維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論

維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論 (ちくま学芸文庫)維新の夢 渡辺京二コレクション[1] 史論 (ちくま学芸文庫)
渡辺 京二

筑摩書房 2011-06-10
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『逝きし世の面影』の著者渡辺京二は、日本近代史の考察に、生活民の意識を対置し、一石を投じてきた思想家である。その眼差しは表層のジャーナリズムが消費する言説の対極にある。本巻には、西欧的な市民社会の論理では割り切ることのできない、大衆の生活意識にわだかまる「ナショナル」なものを追求した「ナショナリズムの暗底」、明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛を常識的定説から救抜する「逆説としての明治十年戦争」、北一輝と日本近代の基本的逆説の関連を問う「北一輝問題」など、日本近代史を根底から捉え返すことを試みた論考を集成する。

渡辺京二がこれまで発表してきた論文をまとめたもの。4年前に一度読んだが、「翔ぶが如く」をコテンパンに評している文章など、西南戦争を扱っている文章群を再読した。

書かれたのが1970年代と古いので、著者自身の分析は今でも古びていないのだが、その舌鋒が向く先が、例えば西郷隆盛毛沢東と同一視するなど今ではもう考えられないような考えをしきりに攻撃しているので、何をこんなに怒っているのだろうと思ってしまう。著者は熊本在住で、西南戦争に加わった肥後の宮崎八郎によほど惹かれているようだ。