チベット潜行十年

チベット潜行十年チベット潜行十年
木村 肥佐生

中央公論新社 1982-01
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ラマ僧に変装し、遊牧民とともに西域を放浪する日本青年の探検記。中国に併合される以前のチベットを伝える最後の貴重な記録。

西域調査のため満州からチベットへ入り、終戦を迎えながらもそのまま現地に留まった著者の記録。昭和18年に出発したときは弱冠21歳だったのだから驚いた。

チベットが併合される前の様子がよく伝わってくる。当時の東チベットで共産中国と隣接していた地域では、チベットの役人の腐敗がひどく、重税のため、中国の方へ逃げ出す住民が多かったとか。現代日本では、チベット=被害者であり善、中国=加害者であり悪という図式がまかり通っているが、物事は一面だけでは見れないということを読みながら感じた。