義民が駆ける

江戸後期の天保年間、老中水野忠邦から突然命じられた理不尽な三方国替え。越後長岡への転封を強いられた藩主を守ろうと、荘内藩の百姓たちは越訴のため黙々と江戸をめざす。深山にわけ入り間道を伝って歩き続ける領民たちの相貌と、彼らを衝き動かした情動を精緻に描く、傑作歴史長編。

一般的にはいい話として見られるものかもしれないが、百姓のしたたかさ、被害者の荘内藩もまた本間家に金の拠出を冷たく迫ったりするなど、それぞれの両面性が感じられる。