明治維新 1858-1881

明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)
坂野 潤治 大野 健一

講談社 2010-01-19
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途上国ニッポンはなぜ一等国になれたのか?「富国強兵」「公議輿論」――。幕末維新期、複数の国家目標を成就に導いた「柔構造」モデルとは何か?政治史家と開発経済学者が明治維新の本質を捉え直す一冊

1858年の日米修好通商条約から1881年明治14年の政変までを、大きく明治維新期としてとらえている。当時の指導者たちが、複数の目標を設定し、お互いに合従連衡し合い、自身も柔軟性をもつという、「三重の柔構造」を備えており、それが20世紀後半にアジア諸国であった開発独裁的な経済成長とは一線を画しているとの主張。さらには、そのような指導者層の柔構造が、その後の戦前日本、戦後日本からは失われているとしている。

薩摩藩指導者の同士的結合が強調され、多様な意見を内包しながらも行動面では一致していたため、他藩に比べて「柔構造」が強く、それが薩摩が主導権を握った一因だとしている。そのような柔構造が、他の土佐や肥前では比較的弱かったとか。久光から西郷、大久保、その他までを十把一絡げに薩摩藩指導者としてしまうのはかなり乱暴にも思う。

また第三部では、梅棹理論が紹介され、明治維新のような柔構造による発展が起こせたのは、大陸から離れた我が国の位置や、江戸時代の内的な発展があったためとしている。

歴史学者と国際開発学者の共著で、取組としては面白いし視点も面白いと思う。