ぼくの比島戦記―若き学徒兵の太平洋戦争 (光人社NF文庫)

太平洋戦争末期、敗色濃いフィリピン攻防戦のルソン戦線に投じられた若き一学徒士官が、自らの苛酷な原体験を描いた感動の労作。陸軍航空軍の通信団司令部に勤務する一下級将校として、対米戦のゆくすえを的確に見つめ、第一線の推移を克明に在るがままに捉える。焼土に屍を晒した日本兵、比島住民たちの姿も追った戦場の真実を伝える鎮魂の紙碑。

著者は通信部隊に配属された少尉で、レイテ戦の様子を通信を介して何とかつかもうとする。その後マニラを脱出してルソン島北部で駐屯し、終戦2か月前くらいに山に入る。ゲリラとの戦いのほかはほとんど交戦していないので悲惨な場面は少ない。こうしたルソン島の戦いもあったのだなと思わせられる。捕虜になった後の様子も細かく書かれていて興味深い。