大義の末

大義の末 (角川文庫 緑 310-8)大義の末 (角川文庫 緑 310-8)
城山 三郎

角川グループパブリッシング 1975-08-15
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天皇と皇国日本に身をささげる「大義」こそ自分の生きる道と固く信じて死んでいった少年たちへの鎮魂歌。青年の挫折感、絶望感を描き、”この作品を書くために作家を志した”と著者自らが認める最重要作品。

城山三郎は世間一般的には経済小説家だが戦争小説も書いている。これは高井戸にいた頃に高井戸駅の本屋で買って一度読んだが、再読した。

杉本中佐の「大義」に影響を受け、予科練の訓練で心に傷を負った少年が、その後の戦後をどう生きていくか描いている。周囲は戦争中の熱狂はどことやらでそれぞれ変わり身が早いが、少年には一時期我が心をとらえた「大義」がそんなに軽いものには思えない。皇太子や天皇が学校や故郷に視察に来る際、どのように迎えればいいのか逡巡し迷う心理が描かれている。京大天皇事件も取り上げられている。

城山三郎本人は予科練ではないが、やはり海軍の特幹に志願してそこで終戦を迎えているので、自身の環境、思いを反映させて書いたのだろう。もうひとつ短編も収録されていてそちらは予科練の訓練生活を題材にしている。もう半世紀以上前の作品だが、読後感はものすごく重たい。城山三郎官僚たちの夏や落日燃ゆもいいが、この作品はナンバーワンだと思う。