法服の王国 小説裁判官

法服の王国 小説裁判官(上)法服の王国 小説裁判官(上)
黒木亮

産経新聞出版 2013-07-13
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「裁判官はあくまで政治的に中立でなければならない」石田和外最高裁長官の言葉で、粛清人事が始まった。大阪地裁の村木健吾ら「現場組」は、司法反動の激流に抗し、「裁判官の独立」を守ろうとする。一方、父親が犯罪者という十字架を背負う津崎守は、「司法の巨人」弓削晃太郎に見込まれ、エリート司法官僚の道を歩き始める。最高裁は、札幌地裁の自衛隊訴訟判決に対する自民党の怒りを恐れ、「長沼シフト」を検討。松山地裁で白熱する伊方原発訴訟の攻防は、津崎をも巻き込む―。裁判所の内幕を抉る社会派巨編小説!

「きみらは、日本国憲法のことをどう思ってるんや?」国家権力からの圧力の中、ベテラン判事が後輩たちに悲痛な声で問い質す。裁判所内では歪んだ人事行政のツケで、首相私邸への偽電話事件、女性被告人との情交、当事者からの収賄といった不祥事が噴出。津崎守は、最高裁調査官、東京地裁の裁判長と順調に出世の階段を上がるが、突然、「招かれざる被告人」が姿を現す。やがて能登日本海原発二号機訴訟が金沢地裁で一審判決の日を迎える。裁判長席に現れた村木健吾は、「世紀の判決」を言いを渡す気負いもなく、穏やかな表情だった―。戦後司法史を描く大河小説、怒涛のクライマックス!

岩波現代文庫で出たが、単行本で区立図書館に入っていたので読んだ。文庫版を買えば良かった。黒木亮作品を初めて読んだがこれはすごい。このような作品を保守反動の産経新聞が連載していたのもすごい。産経新聞も懐が深いところがあるようだ。

裁判官を題材にした小説というのはなかなかないと思うが、ノンフィクションノベルとしてめちゃくちゃ面白い。主要な登場人物がどれも魅力的で、敵役であっても人間的に魅力ある部分が書かれている。原発の運転差し止め判決を下すところはクライマックスで手が止まらなくなる。