ナグネ――中国朝鮮族の友と日本

ナグネ――中国朝鮮族の友と日本 (岩波新書)ナグネ――中国朝鮮族の友と日本 (岩波新書)
最相 葉月

岩波書店 2015-03-21
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電車の行先を訊ねられたのがきっかけで親しくなった中国朝鮮族の女性と過ごした16年間。実家の「地下教会」での抑圧された日々、日本で砕かれた夢と現実、植民地支配と戦争に分断された朝鮮族の歴史などを振り返り、東アジアを跨ぎ自立していく一人の女性の姿を描く。中国・韓国への同行取材を加えて描くノンフィクション。

著者の作品は「絶対音感」以来。16年前に偶然出会った中国朝鮮族の女性を巡る様々な事情を描いている。

中国から日本にきて、日本語学校に通いながらアルバイトを掛け持ちして、渡航ブローカーへの借金と親の借金を返すために必死に働く様子は胸が痛む。筑波の時も中国人留学生がいたし、今でもコンビニなどで中国系のアルバイトの人をよく見かけるが、そういう人一人一人に様々なバックグラウンドがあり、複雑な事情を抱えながら生きているのだろうかと改めて考えた。取り上げられている女性は、その後持ち前のバイタリティと能力で、転職を繰り返しながらもキャリアアップを果たしていくのだが、そうできない人も多くいるのではないのだろうか。

初めて知ったが、中国朝鮮族は、満州国時代から日本語教育を受けていた経緯があり、その後も中国東北部での朝鮮族学校では日本語を外国語として学ぶことが90年代まで続いていた。そのため、中国語、朝鮮語、日本語を活用できる朝鮮族は韓国系企業や日系企業から引く手数多なんだとか。