ローマ人の物語(4)ユリウス・カエサル ルビコン以前

ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)
塩野 七生

新潮社 2004-08-30
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前人未到の偉業と破天荒な人間的魅力、類い稀な文章力によって“英雄”となったユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)。古代から現代まで数多の人がカエサルに魅きつけられ、政治・思想・演劇・文学・歴史等々、数多の視点からカエサルに迫った。それら全てをふまえて塩野七生が解き明かす、ローマ人カエサルの全貌―ルビコン川を前に賽が投げられた時まで。

カエサルが登場し、ガリアを制圧するまでを描いている。次巻とも共通するが、著者はカエサルが本当に好きなようで、全て良いように書かれている。現実がどうだったのかはさておき、物語としては面白いが、司馬史観と同じく英雄史観が塩野さんの根底にあるように思われる。

ルビコン川を渡る前に、それまでの副将がポンペイウス側に着くために離反する場面は、特に読ませる。ガリア制圧の関連では、現代のイギリスとフランスがそれをどう受け止めているか、カエサルブリタニアに上陸したときから大英帝国の歴史が始まったと無邪気に言えるイギリスと、制圧されてローマ帝国の一部になったからこそ、ラインの向こう側のドイツと同じにならなくて済んだという思いがあるものの、被征服者としての感情も残るフランスの微妙な違いが書かれている。