1940年体制―「さらば戦時経済」

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野口 悠紀雄

東洋経済新報社 1995-04
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戦後の日本に、戦時中に作られたシステムが脈々と生き残っているという話。ウォルフレンの日本システム論をベースにしているというが、そちらをよく知らない…。

例えば源泉徴収も戦費調達のために1940年に始まったとか、いわゆる日本的企業形態も戦時中から始まったとか、トヨタや日産も力を付け始めたのは戦時中からだとか、戦後行われた農地改革も、戦争中にその下地が食糧管理法で出来ていたためにスムーズに行われたとか、要するに総力戦遂行のために人為的に作られたシステムが、戦後の経済成長のベースとなっているという話です。

また、高度経済成長を支えたのがいわゆる日本株式会社であるという見方に筆者は異を唱えていて、官の組織は経済成長のもととなった輸出企業よりも、農業などの弱い産業の保護者として力を発揮したと筆者は考えているのが面白いと思った。もともと経済成長には一時的にせよ社会格差の拡大がほぼ付きものであることは現在の中国などを見ても分かるのだが、そのような格差の拡大が戦後の日本ではあまり見られなかったと筆者は指摘している。これには自民党の支持基盤としての農村の存在も大きいと自分としては思うが。

普通に面白い本でした。