雪〔新訳版〕

十二年ぶりに故郷トルコに戻った詩人Kaは、少女の連続自殺について記事を書くために地方都市カルスへ旅することになる。憧れの美女イペキ、近く実施される市長選挙に立候補しているその元夫、カリスマ的な魅力を持つイスラム主義者〈群青〉、彼を崇拝する若い学生たち……雪降る街で出会うさまざまな人たちは、取材を進めるKaの心に波紋を広げていく。ノーベル文学賞受賞作家が、現代トルコにおける政治と信仰を描く傑作

ノーベル文学賞を受賞した直後、つくば市の中央図書館で藤原書店版を借りて読んだ。今回読んだのは文庫の新訳版。トルコ東部のカルスを訪問したKaという作家の行動と、その友人(著者のオルハン・パムク)がその足跡をたどる現代の視点が交互に繰り返されている。今読むと、登場人物が長々と対話を繰り返してトルコの現代版ドストエフスキーという印象。