中世社会のはじまり〈シリーズ日本中世史 1〉

中世社会のはじまり〈シリーズ日本中世史 1〉 (岩波新書)中世社会のはじまり〈シリーズ日本中世史 1〉 (岩波新書)
五味 文彦

岩波書店 2016-01-21
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中央集権的な古代国家から、様々な力のせめぎ合う中世社会へ。院政の始まり、「家」の確立、武士の台頭、そして活力を増す地方の諸国──それぞれに噴出する変革の動きの中で、人びとの価値観は変化し、現代にも通じる日本文化の基本的枠組みが形づくられてゆく。日記、芸能、絵巻などにも注目しつつ、主として武家政権の誕生までを射程に、中世始まりの時代を描く。

岩波新書の日本史シリーズ。近現代、古代、近世ときて、最後に中世がシリーズ化された。全4巻なんだとか。

中世はごちゃごちゃしていて苦手だが、断片的な知識の整理にはなったものの、全体的には読みづらい印象。文章がこなれていない。

この著書に限らず最近の通史の傾向だと思うが、いわゆる事件史とか英雄史になることをおそれるあまりなのか、学習漫画的になることを避けているのかしらないが、教科書レベルの事件は省略する又はきわめて記述が薄く、かわりに文化史だとか民衆史を盛りだくさんにする傾向があるように思う。そういう世の中の流れなのかもしれないが、一冊の本として見たときに不親切なことこの上ないし、読んでいて全く面白くない。この著書も、シリーズの1巻目でそもそも対象外という整理なのかもしれず、2巻目でちゃんとフォローされるのかもしれないが、保元平治の乱まではそれなりに書かれているものの、その後の平家の滅亡は一行(!)だけ。

その後は文化をテーマに中世全体を見ているが、家の形成は何となく分かったものの、その後の「身体」の文化だとか「職能」の文化だとか、いまいち良く理解できなかった。和歌を詠むようになるのがなぜ身体の文化ということになるのだろうか。ただ、最後の結論にある、この中世に発祥した文化が今の現代日本にも多く残っているという主張は納得。