新カラマーゾフの兄弟(上・下2巻)

新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)
新カラマーゾフの兄弟 上(上・下2巻)亀山郁夫

河出書房新社 2015-11-19
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ドストエフスキーの未完の傑作、ついに完結……あのミリオンセラーの翻訳者が作者の遺志を継ぎ、現代日本を舞台に「父殺し」の謎に迫る。遺産と女、兄弟の葛藤、そして謎の教団……135年の時を経て、あの名作の謎が解かれる。続編でもパロディでもない「完結編」の行方は?桁外れのスケールで贈る、著者初小説!驚愕のノンストップ・ミステリー巨篇!

上下あわせて1400ページ超で、登場人物も多い。本家カラマーゾフの兄弟にあわせて全4部+エピローグの構成をとっている。このボリュームでまず圧倒されてしまうし、本家をオマージュしながらこれを書き上げた体力気力はすごいと思う。

その上で内容はどうかというと、帯にも書いてあるように賛辞する書評が多いようだ。確かに内容は面白いし、黒木家の3兄弟の造形など、本家と比べながら読むのも楽しいのだが、細かい描写が活かされずにそのまま放置されたり、やたらと登場人物が白昼夢や幻視を見はじめて話が飛んでしまったりと、読みやすさは感じない。著者本人をモデルとした「K先生」がストーリー上大きな役割を果たすのだが、亀山さん本人の自己顕示が強くて辟易する。何せ白昼夢で自分がドストエフスキーになってしまうのだから。

もっともこの大部を何はともあれ完結させる、それだけでも評価されても良いのではないかとも思う。この厚さで2000円前後になっているのは、河出書房もそれなりに売れると踏んでいるのだろう。

野方が主要な舞台になっていて、野方へのバスが出ている高円寺の町並みも何度か出てくる。そこは読んでいて楽しかった。