「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
エマニュエル・トッド 堀 茂樹

文藝春秋 2015-05-20
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冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?

2011~2014年までの間の、著者に対するインタビューをまとめたもの。

ドイツとフランス(パリ盆地周辺)とは家族形態が異なり、共有する文化も違うことが強調されている。ドイツは、長子相続、兄弟間の不平等という体制で、伝統的に権威、不平等の文化であるとの主張。大恐慌に際して、アメリカはルーズベルトを輩出したが、ドイツはヒトラーを出したではないかという。

そのようなドイツが、冷戦終了後に東欧の安い生産力を活用して経済を復活させ、EU内では南欧諸国を食い物にして一人勝ちしている。フランスももはやそれに追随しているだ。

指摘自体はユニークで面白いと思うが、全体的に普仏戦争以降のフランス人の嫌独感情、ドイツ脅威論が露骨に現れているし、それが背景なんだろう。フランス人でなければここまで言わないのではないか。日本についても何度か言及していて、ドイツと日本との、文化経済的な類似点もあげられている。ただ、文春編集部が書いている解説の中で、アジアでドイツ帝国に比されるべきは、日本ではなく中国ではないか?との問題提起がされており、確かになあと思わされた。