バルチック艦隊―日本海海戦までの航跡

バルチック艦隊―日本海海戦までの航跡 (中公新書)バルチック艦隊―日本海海戦までの航跡 (中公新書)
大江 志乃夫

中央公論新社 1999-05
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内陸の帝国ロシアはバルト海のムルマンスク以外軍港に恵まれなかった。しかも極北の不凍港へは長い鉄道が必要だった。帝国はバルチック艦隊創設とともにシベリア政略を推進、極東への展開を目論むが新興海軍国日本との争いとなる。日露戦争である。要衝旅順を確保すべくバルチック艦隊は長い遠征の末、待ち構えていた日本海軍と衝突し潰滅する。だがこの日本海海戦は、その後の日本海軍に虚構に満ちた海戦伝説を生むことになる。

日本海海戦だけを書いているわけではなく、15世紀以降のロシアの対外戦略から始まり、イギリスのような外洋艦隊ではなくいわゆる要塞艦隊としてバルチック艦隊がつくられた経緯から書かれている。また、日本海海戦の勝利は、搭載している砲の質や艦船の設計思想からして、必然だったというのもおもしろい。