北一輝論

北一輝論北一輝論
松本 清張

筑摩書房 2010-02-09
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北一輝は1883年、新潟県佐渡島に生まれ、2・26事件に連座して1937年、処刑された。外見的には社会主義者として出発し、国家主義を掲げて非業の最期を遂げた異色の思想家として語られるが、その思想の実体についてはなお多くの論議を呼んでいる。『昭和史発掘』を通じて2・26事件の全体像を精密に描き出した著者が、ヤヌスのような「革命家」の肖像を浮き彫りにする。

前半は、北一輝の著書が先人の著の換骨奪胎であり、特にオリジナリティがあるというものでもないということの実証に割かれており、後半は、主として二・二六事件について書かれている。いずれも、極めて批判的に書かれているが、かといって批判のための批判ではなくいずれも論拠が丹念に書いてあるので読みやすい。元々は1970年代に雑誌に寄稿された原稿だそうだが、当時は村上一郎松本健一などの北一輝論が出、ある種の共感を含めた北一輝ブームのようなものがあったとか。筒井清忠の解説によると、そういったブームに警鐘を鳴らすことが目的の原稿だそうだ。