もの食う人びと

もの食う人びともの食う人びと
辺見 庸

角川書店 1997-06
売り上げランキング : 21,092
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

借りて読んだのだが、すごいなと感じた。印象に残ったのは、ミンダナオ島の日本軍の一部隊が47年まで降伏せずに山に潜んでいたときにフィリピン人を食べていたという話と、ポーランドで1981年に戒厳令を発令して連帯の運動を抑えた元大統領が、著者に「最近テレビを見ながらワッフルなどのお菓子を食べるようになってしまった」ことを自分の弱さとして打ち明けるところ。

ミンダナオ島の話は、南方での日本軍によるカニバリズム終戦後にも続いていた、少なくとも可能性があるということにまず驚いた。戦争中のカニバリズムを扱ったものはもはや古典である「野火」や最近だと「終戦のローレライ」などがあったが、おそらく一度食べてしまうともう理性だけでそれを中断させるのは厳しく、降伏などの外的要因がないと続けてしまうものなのかと感じた。

ポーランドの元大統領は清貧・粗食を旨としていてあまり肉を食べず酒もたばこもやらないらしい。そのような常に自制するような生活をおくってきた後だと、テレビを見ながらお菓子を食べることもなんらかの罪悪感を感じるようになるのかもしれない。社会主義国家の元首領としてはめずらしいのではないか。むしろヒトラー菜食主義者で酒もたばこもやらなかったとか。