最近のもの

「どくとるマンボウ青春記」は相変わらず良い。昔は、旧制松本高校の寮時代の破天荒な頃の記述が好きだったが、今読むと、寮を出てからや東北大に行ってからの陰鬱かつ沈んだ雰囲気のところが良い。学生のときになぜもっと有意義な時間の使い方をしなかったのかと思わされる。もっとも30を過ぎてから読むものでもないのかもしれないが。

「世に棲む日々」は、大岡昇平高杉晋作について書いていたので興味をもって読んだ。前半は吉田松陰、後半が高杉晋作。司馬作品はやはり面白いが、これも本来は大人になって読むものではないかも。解説を松本健一が書いていた。

ロシア革命」は2月革命がなぜ失敗し10月革命に至ったのかを当時の経緯をたどりながら書いている。当時のロシアでは民衆との間に大きな断絶があり、権力を安定させるのに民衆の力を使うことができ、かつ権力を握った後には冷酷に弾圧することができたのがボリシェビキで、カデットやメンシェビキ、エスエルはそれができなかったんだとか。

「「国語」の近代史」は、植民地での日本語教育などの記載があったので読み始めたが、予想以上に面白かった。中国語をカタカナで表記し、日本語の学習を容易にしようと考えられた満州国における満字カナの存在などまったく知らなかった。また、敗戦によって、それまで植民地での使用を考えざるを得なかった日本語が事実上国内に限定され、国語学者たちは考えることが減ったが、それまで国語のあるべき姿を目指すためのお題目として「大東亜共栄圏での通用」としていたのをただ「民主化」と書き換えるだけで、その考えはさほど変わらなかったというのも面白い。昭和21年の現代仮名遣いは、元々は昭和10年の文部大臣の諮問があり、それを受けて行われたというのも興味深い。

「文体の科学」は、法律の文体に着目しているというので関心をもったが、それほど面白くはなかった。

ゲバラ」は、キューバ革命史を丹念に追っていて勉強になった。キューバ革命直後、ゲバラは旧体制下の軍人や警官たちを処刑する役目を負わされていて、それはカストロが外部の人間であるゲバラに押しつけたとも言えるとか。