裏声で歌へ君が代

裏声で歌へ君が代 (新潮文庫)裏声で歌へ君が代 (新潮文庫)
丸谷 才一

新潮社 1990-07
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中年の独身画商梨田は、地下鉄の長いエスカレーターを昇っていくとき、降りてくる側に、知り合ったばかりの若い美貌の未亡人を認めて、咄嗟に逆乗りをし、彼女を伴って“台湾民主共和国”準備政府の大統領就任パーティに出席するが…。水際立った発端、スリリングな展開、最上のユーモアとエロティシズム。練達の著者が趣向の限りを尽して国家とは何かを問いかける注目の純文学巨編。

学生の頃に一度読んだが、話の筋はほとんど覚えておらず再読した。

その頃はあまり思わなかったが、これは一種の戦争小説だ。主人公は幼年学校出身者でありながら陸士に進まず、終戦前に徴兵されて二等兵になる。陸士に進まなかったときからある種の戦後を生きていたことになる。二等兵時代の小隊長と再開する箇所が良かった。