靖国神社

靖国神社 (岩波新書)靖国神社 (岩波新書)
大江 志乃夫

岩波書店 1984-03-21
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かつて靖国神社は、国民を「天皇の軍隊」に結びつけるきずなの役割を果してきた。今日では一宗教法人となっているが、近年、現職首相の参拝が慣行化し、また国家護持を求める動きも執拗にくり返されている。本書は、靖国信仰がどのようにつくられ、戦争への国民動員にいかに利用されたかをたどって、今日の靖国問題の意味を明らかにする。

小泉首相の参拝の頃にも様々な靖国本が書かれたが、中曽根首相の参拝の頃に書かれた、いわば古典。靖国神社のみならず、国家神道についても解説してある。もっとも印象的なのは、人が神となることについて書いた部分。

曰く、「人が神と化するのは、古代以来の怨霊の神への転化、また、明治以降の一部(乃木、東郷など)をのぞけば、靖国神社に合祀されることだけである。一般に慰霊をする場合、あくまでも人の霊を慰めているのであり、神の霊ではない。」。これを考えると、”死んだらみんな神になるのだから云々”という議論は、心情的にはともかくとしてもあまり妥当性がないのではないかと思う。