漂流

漂流 本から本へ漂流 本から本へ
筒井 康隆

朝日新聞出版 2011-01-07
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筒井康隆のつくり方が、ここに明かされる! のらくろ、乱歩、西遊記、ウェルズ、イプセン、クリスティ、フロイド、セリーヌヘミングウェイ、カント、ハメット、三島、川端、大江、マルケスハイデガー……生まれて初めて手にした書物から、創作活動の源泉となった小説、戯曲、哲学、漫画まで、著者自らの半生を追いながら、同時代に触れた書物の来歴を惜しみなく開示する自伝的書評集。大江健三郎氏推薦!

筒井康隆朝日新聞の読書欄に連載していたものを単行本化したもの。後半は読んでいたが、前半のほうは目を通した記憶がなかったので面白く読んだ。子供の頃から読んで印象に残っている本を一冊ずつ紹介している。

ひとつ良かったことは、昔読んだがずっと題名や著者がわからなかった作品の名前がわかったこと。メリメのマテオ・ファルコーネという作品。コルシカ島が舞台で、ある親子のところへ官憲に追われた男が逃げ込んでくるが、そこの息子が賞品ほしさに密告し、追われていた男は捕まってしまう。それが発覚したとき、父が黙って息子を外へ連れ出し、祈りを唱えさせた後に射殺する。泣き叫ぶ母親に対して、父が「裁きをつけたんだ」という話。小学生のころに、少年少女世界文学全集で読んだ後、話の筋はくっきりと覚えているものの著者や作品名がさっぱりわからなかった。筒井氏がこの本で触れていて、題名がわかりすっきりした。