昭和維新の朝

昭和維新の朝昭和維新の朝
工藤 美代子

筑摩書房 2010-08-09
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著名な女流歌人、齋藤史が1994年、宮中歌会始に召人として召されたことは、大きな話題になった。というのも、その父である陸軍少将・齋藤瀏は、昭和天皇を激怒させた2・26事件を主導した青年将校たちの、有力な支援者だったからである。歴史に関わり、翻弄されたひと組の父と娘の歩みを通して、昭和史の激動の真実を生き生きと描き出す。

二・二六事件連座した斉藤劉を主題に描いた本。斉藤は事件当時は予備役少将で、青年将校たちと親しく、蹶起への助言、資金的な援助をしていた。そして、和歌に親しむ歌人将軍でもあった斉藤の娘が、女流歌人斉藤史斉藤史が平成6年の歌会始に召人として喚ばれるところから記述が始まる。宮中の階段を上るとき、向こう側に軍服の青年将校たちがかすかに見えたという。処刑された栗原中尉や坂井中尉とは、斉藤史は幼なじみだった。

斉藤史については、「神聖喜劇」の中でよく東堂太郎が引用していたが、その背景について初めて知った。

この人が書いた「関東大震災朝鮮人虐殺」の真実」は地雷本の予感がし、著者自身についてもある種の偏見を持っていたが、これを読んで見直した。ただ、ところどころでコミンテルン陰謀論をぶちあげるのがこの著者の特徴のようで、それだけは残念だった。