日本共産党の研究

4061830414日本共産党の研究 (1)
立花 隆

講談社 1983-01
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前買っておいた本書をやっと読み終えた。1巻はすぐ読んだのだが、2、3巻を読む前にテストに入ってしまって。

戦前から戦後にかけての共産党を描写してあるが、かなりの力作である。コミンテルンの忠実な支部であろうと努力しながら特高に弾圧されていき、スパイM事件、リンチ事件を経て完全に壊滅するまでの流れを、よく調べたなと思うほどに精密に書いている。本書で初めて世間に公開された真実も多くあるようである。

特高は、共産党内部に潜り込ませたスパイによってかなりの情報をつかんでいたらしい。1930年から1年半ぐらいのいわゆる"非常時共産党"時代は、スパイMと呼ばれるスパイが党の実質No,1となり、党を指導しつつスパイ活動をしていたので、共産党特高の手の中で踊っている状態だったようだ。スパイ活動をしている共産党員が特高の人に呼ばれて、「党のポストが今空いているからそこに入らないか」とか言われる状態で、いわゆる"官製共産党"であったらしい。

もっとも、日本の公安は伝統的にヒューミント、スパイを組織に潜り込ませる情報活動が得意なので、現在の公安調査庁公安警察も同様なことをしているのかと思うとちょっと国家権力の強さというのも感じる。官庁探訪で公安調査庁に行ったときも、スパイを潜り込ませる云々という話をしていたし。

また、日本独特の文化とも言うべき"転向"にも詳しく言及してある。獄中で鍋山・佐野が転向宣言をしてから雪崩現象的に転向者が続出していくのであるが、転向者の非転向者に対する鬱屈した感情であるとか、逆に非転向者が転向者を見る感情というのが書かれていて勉強になった。ここもまた非常に日本的であると思える。戦後、共産党において宮本顕治が影響力を保持しえたのは、ひとえに黙秘及び非転向を貫いたからである。っていうか、宮本顕治ってまだ生きてるんですね…。

とにかく、かなり面白いかつ勉強になる本でした。