戦死 インパール牽制作戦 (文春文庫)

昭和21年2月9日、元陸軍大佐棚橋真作はGHQからの出頭命令に接して、古式通りの割腹自殺をとげた――著者は、その死に疑問をいだき、間近に迫っていたインパール作戦の陽動作戦として実施された「ハ号作戦」に参加した第55師団の生き残りの人々の証言や日録を克明に調べていくうちに花谷正師団長の部下への自決強要の問題が浮かび上がってくる。軍隊という巨大な組織の冷酷無残な非人間性を描いた戦記文学の傑作。著者のインパール五部作の一冊。

高木俊朗のインパール作戦5部作のうちの1作。数年前に文春文庫から他の4作品は復刊されたが、なぜかこの作品だけは復刊されていない。第一次アキャブ作戦、第二次アキャブ作戦を扱っていて、当時の棚橋連隊長が戦後すぐに割腹自決したことから始まっている。作戦中、とにかく攻撃を命令する第55師団の花谷師団長と折り合いが悪かったことが述べられ、その後、花谷師団長の暴虐ぶりが描かれる。師団長から暴力を振るわれて自殺したり、撤退したことで自決を強要されたりした何人もの将校・兵士が、公報上では全て戦死として書かれている。これがタイトルとつながっていることに気づいてぞっとした。師団司令部では師団長に殴られることが日常茶飯事で雰囲気が悪かったようだ。もっとも、殴ったり自決の強要は極端にしても、周囲が何もできなくなるのは日本の組織の根っこにある問題のようにも思う。これだけ復刊されていないのは、花谷師団長の遺族への配慮か、それともあまりに生々しすぎるからか、どちらなのだろう。